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Tetsuya Uematsu

On the Brauer group of diagonal cubic surfaces
(Quarterly Journal of Mathematics, 65 (2014), no.2, 677--701)

一本目の論文とあって, いつか振り返った時には, 印象深いものになるだろうと思う.

研究のきっかけとなったのは, 対角的3次曲面に対する, Maninの結果と, それを使って, 曲面のゼロサイクルを計算した, 斎藤-佐藤の結果. 当時の指導教員であった斎藤秀司先生から, 「Manin が求めた生成元をより一般的な場合に求めて, ゼロサイクルをきっちり計算してみては?」と言われて, 研究を開始した.

結局, 一般化した状況では, 生成元が「解の公式」のような形では存在しないという, 当初の目論見とは逆の結果が出てきて, この手法で, ゼロサイクルを計算し尽くす, という方向性は絶たれたのだが, これはこれで, 面白い結果であると, 自分では思っている. 証明としては, あるコホモロジー群の中で, あるコサイクルが消えていないことを示す, というもので, 振り返ってみれば, コサイクルを, ひたすら計算して, 消えているか消えていないか調べやすい群に持って行く, というだけの話なのだが, そこに至るまでの道筋は不透明で, 消えていないとわかったときは嬉しかったものだ.

東大は, 投稿してある状態であれば, 学位取得の要件を一応は満たすので, 他大では間に合わないだろう, D3の10月に投稿. 学位論文審査の前日にジャーナルからコメントが戻ってきた. これでリジェクトだったら, 学位は貰えないのでは?というような不安にも駆られたが, リジェクトではなく, "major revisions" だった. 改訂をして, 再提出. 初めての作業だというのに, 早く返すことだけにとらわれて, 先生にやり方を相談したりということもせずに改訂・提出してしまったのは, 全く軽率だった.

結局, 投稿から5ヶ月ほどでアクセプト. 卒業までにもらえるとは思っていなかったので, 結構安心したのを覚えている.