Zero-cycles on diagonal cubic surfaces over $p$-adic fields
(Mathematische Zeitschrift, 279(2015), no.3-4, 1047--1066)
2本目の論文. もともと1本目の論文は, この計算を完璧に仕上げることを目標にして行ったものだったが, 予想外の方向に進んだので, こちらも全ての対角的3次曲面の 0次 Chow 群を調べきる, ということはできていない.
斎藤-佐藤による $x^3+y^3+z^3+dt^3=0$ の 0次 Chow 群の計算手法を元にして, 幾つかのまだ明らかになっていなかったクラスの 0次 Chow 群の構造を決定したのが, 1つめの仕事. 手法は同じとはいえ, 計算のために必要になる正則モデルを blow-up して作ってくる必要があるなどの理由から, 計算過程が斎藤-佐藤のそれ以上に大変で長大になる.
2つめの結果は, $x^3+y^3+z^3+dt^3=0$ で, 剰余体の標数が $3$ でない場合に, 0次 Chow 群が, 有理点のクラスから生成される, という結果. とある日, 食事をしながら, 「有理点だけで作れるんですかね?」という質問を佐藤周友先生から振られたのが, 研究の直接のきっかけ. 当初は, 具体的に, 有理点を捕まえてくることを考えていたのだが, どうも取ってこれない場合が出てくるので, 「有理点で生成されるくらいは言えるんじゃないか」ということで, 方向転換. Colliot-Thelene--Kanevsky--Sansuc や Madore に見られるような, 楕円曲線上のある種の評価写像を考えて, その非自明性をガリガリ計算することで, 証明をつけることができた. $p=3$ の場合にどうなるのか, 一般の対角的3次曲面ではどうなるのか, というのが今後の課題として残るが, 手を付けていない.