更新日:2011年2月25日



アブストラクト
  • 門田 直之(大阪大学 D3)
    Lefschetz fibration の singular fiber の本数について

    Lefschetz fibration とは,「有限個の点上にのみ特異ファイバー(潰れたファイバー) を許す曲面上の曲面束のようなもの」である.Lefschetz fibration の位相的な性質 は,写像類群の代数的な構造に依存することが知られており,特に特異ファイバーの 本数については密接な関係がある.今回は Lefschetz fibration に現れる特異ファイ バーの最小本数と最大本数について考察したい.


  • 早野 健太(大阪大学 M1)
    Classification of genus-1 simplified broken Lefschetz fibrations

    Broken Lefschetz fibration は,Lefschetz fibration と symplectic 構造との関係を, near-symplectic 構造に一般化すべく導入された,Lefschetz fibration の拡張概念である. その特別な場合である simplified broken Lefschetz fibration の全空間は, それに含まれる Lefschetz fibration の構造からほとんど決まり, さらにそれは閉曲面の写像類群の元の列の Hurwitz 同値類で表わせる. 今回の講演ではこれらの対応を説明し,それを用いて得られた, 種数1の simplified broken Lefschetz fibration の分類についての結果を紹介する.


  • 北山 貴裕(東京大学 D3,日本学術振興会特別研究員(DC1))
    Reidemeister torsion and homology cylinders

    同一曲面の間のホモロジー同境である homology cylinder のホモロジー同境群は, 特別な場合として,3次元ホモロジー球面のホモロジー同境群及び結び目の concordance 群を含み,曲面の写像類群の拡大となっている.Reidemeister torsion 及び homology cylinder の基礎的事項から始め,torsion を用いて構成さ れるホモロジー同境群を定義域とする可換準同型について解説する.また,曲面 からの包含写像が基本群の高次の可解商上に同型写像を導くような,特別な homology cylinder たちに対して講演者が得た結果を紹介する.


  • 小谷 賀子(奈良女子大学 M2)
    Taming essential tori in link exteriors

    一方の成分が trivial であるような, 3次元球面内の 2-component satellite link に対し, その trivial knot 成分が minimal bridge position を実現して いる状態での bridge index というものを導入し, それについての結果を紹介する. 特に, 上記の新しい bridge index と, 一般に知られている bridge index との 差がいくらでも大きくできるような例が存在することを紹介する.


  • 伊藤 哲也(東京大学 D2,日本学術振興会特別研究員(DC1))
    Bi-ordering of 3-manifold groups: survey and prospect

    この講演では,3次元多様体の基本群がいつ bi-orderable であるか? という問題に対して,これまでに知られている結果や手法, そして今後への展望をまとめる. 以下のトピックについて講演者の結果を交えて基本から解説する.
    • bi-ordered group
    • 2次元の場合:surface group の bi-orderability problem
    • Alexander polynomial criterion へ
    • Bi-ordered group の剛性定理
    • Alexander polynomial criterion が拡張できない!?
    • open problems,今後への展望,期待される手法


  • 野坂 武史(京都大学 数理解析研究所 D2)
    望月コサイクルを使った不変量とDijkgraaf-Witten不変量

    この仕事は、畠中英里氏(東京農工大)との共同研究による。 まず p を奇素数とし, $\phi$ を望月氏のカンドル3コサイクルとする. $\phi$ を用い, カーター-鎌田-斎藤氏らにより、$S^3$ 内の絡み目のシャドーコサイ クル不変量が組合せ的に定義された.$M_L$ を絡み目 $L$ に沿った2重分岐被覆とす る.我々の主定理とは,$L$ のシャドーコサイクル不変量は,巡回群 $Z/pZ$ に おける $M_L$ の Dijkgraaf-Witten 不変量と(定数倍を除き)等しい事である. 系として,いくつかの Dijkgraaf-Witten 不変量を計算した. この講演では, 両者の不変量の定義から復習し,主定理のシンプルな証明を紹介する.


  • 正井 秀俊(東京工業大学 M2)
    On two volume formulae in terms of orthospectrum

    測地的な境界を持つ双曲多様体に対しては, 「境界に直交する測地線」が定義できる. それらを直交測地線と呼び, その長さを重複度込みで集めた集合を直交スペクトラムと呼ぶ. Bridgeman-Kahn とCalegari はそれぞれ独立に, 異なる手法で直交スペクトラムによる体積公式を導き出した. このセッションでは, 3次元の場合に着目し, 二つの体積公式を比較した結果を紹介する.


  • 張 娟姫(広島大学 D3,日本学術振興会特別研究員(DC2))
    Bridge presentations of links and meridian generators of link groups

    この講演では, 絡み目の橋分解と絡み目群のメリディアン生成系の関係について解説する. 特に, 絡み目群のメリディアン生成系の最小数は絡み目の橋数以下であることが知られているが, その逆についてはまだ未解決である. この講演の前半では, この問題について今まで知られている結果等を紹介し, 後半では, 講演者と Michel Boileau 教授の共同研究によって得られた結果を紹介する.


  • 宮戸 勇(名古屋工業大学 M2)
    結び目のドット付きダイアグラムから得られる多項式について

    Alexander多項式をAlexanderが導入した方法は,ドット付きダイアグラムを用いたものである. 今回,ドット付きダイアグラム $D$ に関して2つのことを紹介する.
    • $D$ が special alternating のとき,それから得られる多項式の,最高次数と最低次数が 向きを込めたザイフェルト円周と $D$ の交点数で決定出来ること.
    • $D$ の特定の交点のドットの付け方を変えたものから得られる,RIIIだけで変化する多項式について.


  • 坂東 直紀(名古屋工業大学 M2)
    インシデンス行列を用いたアレキサンダー多項式の導出

    Alternating を仮定しない special link diagram $D$ に関して,それのアレキサンダー多項式を インシデンス行列というものを用いて導出できた.さらに, $D$ から自然に得られるザイフェルト行列を $M$ としたとき,インシデンス行列を用いて $(M-tM^T)$ や $(M+M^T)$ そのものを $M$ を用いることなく再現することが出来た. 本講演では,インシデンス行列と $(M-tM^T)$ や $(M+M^T)$ の対応を紹介する.


  • 阿部 翠空星(京都大学 数理解析研究所 M1)
    On quandle 4-cocycles of Alexander quandles on finite fields

    カンドルの非自明な3次または4次のコサイクルが具体的に与えられると,曲面絡 み目のカンドル(シャドウ)コサイクル不変量が定義できるため,カンドルの3次と 4次のコホモロジー群を決定することは重要である.有限体上のアレクサンダーカン ドルの2次と3次のコホモロジー群は,コサイクルを多項式で表しコサイクル条件を 正標数上の或る線型微分方程式に書き直すことにより,望月拓郎氏によって決定され ている.また,奇素数位数のカンドルのすべての次数のコホモロジー群は野坂武史氏 により決定されている. 本講演では,望月氏の方法を4次に拡張することによって,有限体上のアレクサン ダーカンドルの多くの非自明な4次のコサイクルを具体的に表示する.とくに,その ようなカンドルの2次のコホモロジー群が0などの条件があるとき,4次のコホモロ ジー群を決定する.


  • 岸本 健吾(大阪市立大学 数学研究所 博士研究員)
    The quandle coloring invariant of a reducible handlebody-knot

    ハンドル体結び目が既約であるとは, そのハンドル体結び目と 一つの本質的円盤で交わるような2次元球面が存在しないことである. 本講演では, 与えられたハンドル体結び目が既約であるかどうかを 判定するいくつかの手法を紹介する. (本研究は, 筑波大学の石井敦氏との共同研究である.)

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